第五夜 8月12日

−−今回のインタビューでは、零〜刺青の聲〜のゲームシステムについてお聞きします。
   今作で大きく変わったところはどこなのでしょうか?

菊地(プロデューサー):
今回は、前作までのような廃墟となった日本家屋と、プレイヤーが日常に生活する家の2つのステージがあることが大きいですね。

柴田(ディレクター):
主人公が眠ると、夢の中で日本家屋に誘われるという設定です。雰囲気が違う2つの世界を行き来しながら、夢の中で得たヒントをもとに現実で謎を解いていく、という感じですね。

 

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二つの世界について
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−−なぜこのシステムになったのでしょうか

菊地:これまでは、日常に生活している空間の中で起きる恐怖現象というのをやってこなかった。今回はそれを加えることで、新しい怖さを提供できると思ったんです。

柴田:寝ていて目が覚めたら誰かが立っている…なんてのは映画では定番なのに、今までの零シリーズではなかったからね。私もたまにありますよ。寝ていたら女の霊が倒れこんできたり。

菊地:そんな経験があるのは、お前だけだよ!

−−今回もなにか霊現象はあったんでしょうか

柴田:それは次回に語ることにしましょう…
菊地:まあ、それは後にして先に進もう。

柴田:これまでの零シリーズは、私が見た"怖い夢"と"実際の霊体験"からネタを得ていたんです。眠ると夢の中で氷室邸や皆神村に行けましたからね。そして少しづつ奥に進んでいくと謎が明らかになるですけど、どんどん怖いことが起きていく。起きたら、それをメモしながら、この夢の謎について考えたりする。
今回は、そんな私の生活そのものをゲーム化しました。

菊地:え!? 本当にそれが元ネタなの?

柴田:ウソです。でも、まあ半分は本当かな。起きてから夢の内容を整理していくと、断片的な夢の現象がだんだんつながってくるんだよね。それが面白かったりする。かなり個人的なことだけど。

菊地:それは今作のゲームシステムにも関係があるな。ちょっとむりやりだけど。
今作では、手帳システムを導入していて、主人公が分かったことがどんどん記入されていくんですよ。

柴田:深紅に調べてもらったことや、自分で聞いたことや、見たことなど、いろんなところから入ってくる情報が手帳にまとめられていく。それで、プレイヤーにも、主人公と一緒に、この刺青の聲の世界の謎を解明していってもらえればと思います。

  …ちょっと話題それていい?

−−ええ…ど、どうぞ。

柴田:実は、小さいころ近所に古い廃屋があって、そこに忍び込んで遊んでたんだよね。
そこは潰れかけた日本家屋で、床も穴が開いていて、ゴミだらけで、なぜかそこは昼間でも暗かったんだ。学校が終わってから、友達とそこに探険に行って、中から「証拠品」を持ってくる遊びにハマったことがあって、すごく怖かった。
そこには、見えない何かが徘徊していて、そいつが支配している家。見つかったら死んでしまう…と、まあ信じていたんだけど。それに、見つからないように隠れながら少しづつ進んでいく。

菊地:昔からそんなことしてたのかよ…

柴田:手帳の切れ端とか、湿ったマッチとか。それから、ここで何が起こったか推理する。家族関係とか、犯人とか。

菊地:犯人?

柴田:あるとき、壊れた人形を拾ってきたんだけど、背中から紐がついてたんだよね。それで、引っ張ったら、何かしゃべったんだよ。変な歪んだ声で。それで怖くなって返しにいったっけ…
でも、ある事件をきっかけに、行かなくなった。
あの時見たんだよ。白い髪のおばあちゃんが乳母車を押しながら、すごい勢いで走ってるの。誰も住んでないボロボロの家なのに。それで本当に怖くなってもうやめた。
まあ、なんかヤバイものが支配している家があって、そこから少しずつ取ってきては推理していく。
まあ、あの感覚が今作でも出せたらいいな、と。

菊地:「いいな、と」じゃねえよ!
まあ、そういう実体験が元になっているということで。皆さんはマネをしないでくださいね。


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複数の主人公について
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−−次に主人公が三人いるということについてお聞きします。

菊地:各キャラクターについては以前説明したけど、それぞれ違ったプレイ感覚を持ったキャラクターで楽しんでもらうおう、というのが狙いでした。深紅は写真の威力は強いけど写せる範囲が狭いとか、床下に入れるとか。

柴田:螢で隠れながら女難を楽しむとか。あの眠りの家は"男子禁制の家"という設定ですからね。

菊地:それはもういいよ! たしかに眠りの家は男子禁制の設定だけどね。

柴田:あと、それぞれのキャラクターが、自分の視点で物語に関わっていく。それが手帳にもまとめられていくので、最終的には、怜というかプレイヤーがまとめていくという面白さを出したかった。
あと…実は、私の最初の企画書では、怜、深紅、澪が同居している家という設定だったんですよ。

−−そうなんですか

柴田:しかし、「それは、一体どんな家だ!?」ということで反対にあった。

菊地:完成したゲームを見てるから、そのゲームが想像がつかないな…
そこに螢がやってくると、なんかさらに女難の館ができるような気もする。

柴田:まあ、『零〜紅い蝶〜』の澪を主人公として出すとなると、紅い蝶をプレイしたことがある人とない人で、あまりにも思い入れに差があるというか、経緯を説明するだけでも大変ということもあって、結局は今の形に落ち着いたんですよ。


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バトルシステムについて
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−−では、次に射影機を使ったバトルのシステムについて伺います。

柴田:簡単にいうと、『零〜zero〜』と『零〜紅い蝶〜』のいいとこどりです。

菊地:うーんそのとおりだが、身も蓋もないな。

柴田:『零〜zero〜』の戦闘は難しい、と言われて、『零〜紅い蝶〜』の戦闘は、霊が迫ってくるのは怖いけどわりと簡単と言われたので、システムも敵の動きもいいとこどりにしようと。

菊地:そう。システム面でも零シリーズの集大成的なものにしました。

柴田:今作のコンセプトとしては、この眠りの家は霊が支配している領域という感じを出したかったので、各霊が中ボスクラスの強さなんですよ。攻撃にも段階があって、最初に会ったときはわりとじわじわと寄ってきたりするんですけど、だんだん狂ったようにスピーディーな動きになってくる。

菊地:今回はちょっとテクニカルだな。強化レンズや特殊能力をうまく使いこなさないと難しいけど、
ちょっと考えてその辺がうまく使えれば、楽に進める道があるという…

柴田:前作よりもプレイヤーがだんだん上達していく楽しみを出して、ゲームとして面白くしよう、というコンセプトだからね。

菊地:強いと思った霊でも、いろんな手段を考えて欲しいですね。

−−ありがとうございました。
   次は、「ゲーム製作中にあった、本当にあった怖い話」について伺います。お疲れ様でした。

柴田:ついに言う時がきたか…

菊地:なんだよ。今回はやけにシリアスな顔だな…