(ハイパープレイステーション2・9月号に於いて掲載されたものより転載いたしました)

その1・刻命館シリーズから『零〜zero〜』へ

『刻命館』から受け継いだ発想はダークな雰囲気と新しいシステム
---今まで菊地さんは『刻命館』シリーズをずっと手がけられてきたそうですが?
菊地 「はい。1作目、2作目の『刻命館』と『影牢』ではメインプログラマーとして。
3作目の『蒼魔灯』に関しては、プロジェクトマネージャーとして、シリーズにかかわってきました」
---そして今回、初プロデュース作品となるのが、この『Project 0(仮)』ですが、
同じホラー調の世界を扱いながら、『刻命館』シリーズとは全く異なる内容の作品のようですね?
菊地「そうですね。この作品に関しては、現在のタイトルは『Project 0(仮)』と
なっていますが、実はこれは開発コードのままなんです」
---だから”仮”なんですね?
菊地「ええ。これの開発チームも『刻命館』シリーズを手がけてきたメンバーでは
あるんですけど、一旦、『刻命館』シリーズは寝かせておいて、
全くゼロのところから新しい遊びをつくろうというプロジェクトを立ち上げた。
だから『Project 0(仮)』という名称になっているんです」
---…もしかして『刻命館』シリーズの開発に飽きてしまったとか?(笑)
菊地「いえいえ、そういう意味じゃないですよ(笑)。
まだまだやりたいことはあります…でも、ゲーム性としては完成した域に
入ってしまったシリーズなので、あのシステムを離れて、一度新しいゲームを
つくり、そこからもう一度作品を見直すことも必要ではないかと。
実際、僕らも、シリーズとしては3作目となった『蒼魔灯』が集大成、と考えています」
---では『刻命館』シリーズと今回の『Project 0(仮)』には、
ゲーム上の共通点はないのでしょうか?
菊地「一概にそうとは言えません。『Project 0(仮)』を立ち上げたときに、
僕らは、われわれのアドバンテージとはなんだろう?を突き詰めました。
それが”ダークでおどろおどろしい雰囲気”と”今までにない新しいゲームシステム”
のふたつだったんです。『刻命館』でもトラップバトルという新しいシステムを提示した。
だから、このふたつを特化させていくとどうなるか?を模索した結果、
”ホラーゲーム”というジャンルに突き当たったんです」
---そこに『刻命館』シリーズの根本的な考えを継承しているわけですね。
菊地「ただ、ひと口に”ホラー”といってもいろいろな表現方法がありますよね?
”ホラー映画”もあれば、僕らがやろうとしている”ホラーゲーム”もある。
そのふたつの大きな違いであるゲームの持つインタラクティビティをいかす
ことが重要だろうという命題がありました。”ホラー映画”も”ホラー小説”も
確かに怖さという意味では同じような体験ができますけど、
見て怖いだけでは、あえて僕らがつくるような”ゲーム”である意味がない。
僕らの目指す”ホラー”が”ゲーム”である以上は、プレイヤーが実際に
コントローラを触って怖いもの、をつくらなければならない。
それが『Project 0(仮)』の出発点でした」
---でも、そうやってゲームで恐怖を体験させようという”ホラーゲーム”は、
今までたくさんの作品が世に出てしまってますよね?
そのジャンルで、それまでにない新しさのある作品をつくるというのは、
とても難しいんじゃないですか?
菊地「そうですね(笑)。僕らもいろいろな作品を遊んでみましたが、その体験の中で、
新しいホラーゲームにチャレンジするために、ふたつほどクリアしたい課題があったんです。
例えば、ある種のホラーアドベンチャーは、世界観は怖くても敵との戦いそのものが怖くない。
それでは淡白だろう。また、怖いものを見るとダメージをくらうというシステムを
採用しているゲームでは、怖い体験をすること自体がプレイヤーにとって
デメリットになってしまうため、なるべく怖いシーンを見ないようにしようとしてしまう。
それでは、怖さの核の部分に触れられない。ゲームとしてはどちらも面白いんですが、
僕らが目指している”ホラーゲーム”は、そうではないものにしようと思ったんです」

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