「し、死んでいる!」

細く開かれていた離れの引き戸から、なにげなく覗いた室内には、男性の撲殺死体が倒れていた。

駆け出しの私立探偵、新 一新は、蹴り飛ばすように靴を脱ぎ、室内に飛び込むと、死んでいる青年の手首をつかんで脈を取った。

ラフなデニム地ながら高級そうなカジュアルに身を包み、不自然な形に体をこわばらせた死体は、まだ生暖かく、死んでから、まだ時間が経っていないようだった。致命傷のある頭部からの血潮が畳の上に広がっていく。死体、室内の状況を一通り調べた一新は、警察に通報しようと、雪の積もった中庭を通り、唯一の電話のある母屋へと戻った。金沢、加賀焼の窯元、染谷窯の母屋は旧家らしく、木造和風の作りだ。室内の煮炊きが室内を煤けさせている。

「一新さん、あわてて、どうかしたんですか」

母屋の玄関で腰を下ろして休んでいたのは、一新の聡明なパートナー、京 明日香だ。寒そうにコートの襟を立てた彼女は、一新の姿を見るなり立ち上がったが、まだ車酔いが残っているらしく、少しふらついている。「明日香ちゃん、死体だ。この染谷窯 のお弟子さんが、殺されているんだ!」

車酔いの薬を明日香に運んできた、窯主の娘、彩が、一新の言葉で、湯呑みを取り落とした。警察への連絡を、彩にまかせると、一新は、明日香とともに、離れへと引き返したのだが……。

そのほんのわずかの時間に、離れの死体は、跡形もなく消え失せていたのだった……。

死体消失の謎……。

失われた加賀焼の謎……。

人々の大切な絆が裏切られ……ひび割れた時、歴史ある金沢の窯元、染谷窯を舞台に連続殺人事件が巻き起こる。


復讐の影、第一章。

新一新は、この難事件を解く事ができるのか!?

第一章
第二章
第三章
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