インタビュートップページ 前作の大ヒットを受けて 読み応えのこだわり ゲームならではの事件現場
第2回 読み応えのこだわり

西村:

日本人って欲張りでね、ただ楽しいだけじゃ駄目なんですよ。その土地の歴史とか、タメになる情報とかをまぶさないといけない。歴史を調べていくのは大好きなんですよ。今回登場するライバル「柳沢」も、実は歴史上の人物からとった名前なんです。江戸時代前期、徳川時代に活躍した「柳沢吉保」の響きが気に入ってね。歴史や専門資料からインスピレーションを受けることは多いですね。でも、そればかり書いていると推理が止まっちゃいますからね、エッセンスだけ凝縮して使っています。

設楽: 前作でも、例えば「にじり口」「風炉」といった茶道用語が出てきましたね。茶道を知らない人でも、ゲームを進めていくうちに自然に知識が得られるような仕組みでした。そこが、普通の推理ゲームとは違う、西村先生ならではの面白さだと思います。

前作「DS西村京太郎サスペンス」の画面。

西村: 前作の取材で「ミステリーはトリック重視、サスペンスは人物描写も大切だと考えている」といった話をしました。今回も、歴史や情報だけでなくキャラクターも念入りに作りこんでいます。明日香の過去を知る男「柳沢」の出現は、今回の見所ですね。

設楽: 物語に読み応えがあるところが、大人のゲームとして確かな人気につながったのだと思います。キャラクターひとりひとりが個性的で、さらにその愛憎劇や家族の絆などの人間関係が細かく設定されているので、知れば知るほど魅力にはまっていくんですよね。脇役の作りこみを丁寧にしたことで、より主人公のキャラクターもできてきたと思います。「新 一新」という、上から読んでも下から読んでも同じ名前というのも、一度覚えたら忘れられませんからね(笑)。

新 一新のライバル「柳沢 照彦」


西村:

キャラクターに感情移入して、いっしょになって事件解決に向けて推理を楽しんでいただければ幸いです。

設楽: 舞台が実在する土地なので、主人公たちとともに旅行をしているような気分も味わえますね。先生は、トラベルミステリーを多数執筆されていますが、その取材として全国を回っていたら、もう日本じゅうの歴史・文化・グルメ・乗り物を知り尽くしていらっしゃるのではないですか?

西村: ええ、確かに、日本中の路線はほとんど乗っていると思います。旅をするとき、私はどこでも犯行現場やトリックを考えてしまうんですよ。今回の舞台である金沢も、3回ほど旅しています。

設楽: 先生の作品には寒い地域が多い印象があるのですが、何か思い入れがあるのでしょうか?

西村: 大体ね、犯人って北に逃げるんですよ(笑)。いや、寒い地域は緊迫感のあるストーリーが作りやすいんです。電車が緊急停車したり、吹雪の中を犯人が逃げたりするのも絵になりますしね。

設楽:

寒いところって、名物の食べ物もあたたかいものが多くて、その寒暖のコントラストが物語に味付けしてくれるところはありますね。景色が美しいところも多いですし。

西村: 本当は、有名な観光地でも事件を起こしたいのですが、小説やドラマではなかなか実現不可能なところもありますからね……。


第3回 ゲームならではの事件現場