ソフトバンク パブリッシング(株) 週刊ザ・プレイステーション2
12月21号に於いて掲載されたものより転載いたしました

『零〜zero〜』が生まれた理由(上)

恐怖というのは、人間誰もが持っている感情の1つ
---まず最初に伺いたいのは、霊とか出てくる恐怖を題材にした作品を創ろうとした理由なのですが。
菊地 「恐怖というのは万人に共通する感情だと思うんです。
それで、より多くの人に楽しんでもらえるかなというのがあって、「恐怖」というテーマを選びました。
それ以前にも「刻命館」シリーズをやってきて、ダークな雰囲気と新しいゲームシステムという
2つを売りにしてきたわけですが、このシリーズ作品のほうはひと通りやることやったんで、
次は恐怖というテーマをさらに突き詰めてやってみようかな、という形で始めました。」
---「和」のテイストを選ばれた事に関しては?
菊地「和風の持つ日常性、つまり日本人のプレイヤーなら和風のほうがより接点があるだろう、
と思うんです。ゲームの中は非日常というか突拍子もない事が起こりますから、
日常性とからめることで、ゲームにも臨場感が出て、感情移入してもらえるだろうと
いうことで「和」にしたんです。」
柴田「日本家屋には障子の陰や縁の下、屋根裏など何かが潜んでいそうな闇があるじゃないですか。
その闇を表現したくて、「和風」にしました。」
---日本文化独特の空間を取り入れるということですね。そういえば、紹介記事を始めた直後と、
現在では序盤の設定が大きく変わりましたよね。
菊地「変化しましたね」
---どうして変化したんですか?
菊地「あれは序章のチュートリアルと、主人公がなぜ館に入るのか、という部分を
もう少し明確にしたかったんです。あと車の中から始まって洋館に入るシチュエーションが
「他のゲーム」とイメージ的にかぶってしまうので……。」

小さいころ見た霊はエフェクトがしょぼかった(笑)
柴田「霊に関してはかなり力を入れましたね。
自分が子供のときに見た霊はエフェクトがたいしたことがなくてしょぼかったんです。」
---実際に霊を見たことがあるだけでもすごいのに、エフェクトまで見ていたんですか?(笑)
菊地「霊の表現はどうするんだって言ったら、
柴田が「俺の夢で見たやつを実現する」という謎のコメントを出してくるんです。」
長谷川「それで柴田さんの言葉を元にエフェクト専門スタッフを増やして、ひたすら創り続けました。」
---理想の霊を実現するために。
柴田「でも夢の中に出てくる霊の表現がパワーアップしてくるんですよ。
最初は勝ってたんですけど、最近夢で見た霊がすごいエフェクトを使っていて、
「まずい、こりゃ負けるかもしれない」って(笑)。」
長谷川「エフェクトを何重にも重ねて使うので、処理が異様に重くなるんですよ。」
菊地「さすがにカットしました。」
---霊へのこだわりですね。「霊」をテーマに扱うとき、テレビや映画などではお祓いをしたりしますが、
そういったことはされましたか?
菊地「しようとしたんですが、柴田たっての頼みで、
「お祓いしたら怖くない」というので、あえてお祓いしないことを売りに(笑)。」
柴田「売りではないんだけど(笑)。」
菊地「そうですね、売りではないんですけど、あえてそういう道を選んだんです。
さすがにスタッフの中には、たたりを信じている人もいるので、
そういう人はお守りを首から下げて開発してました。」
柴田「「お祓いなんかしなくていい。お祓いなんかしたら怖くないじゃん」とか言いながら、
一応お札を貼ってたんですよ。どういうわけかいつも席に着くとそれが取れているんですけど……。」
---実際呪われた人はいないですよね。たとえば急に高熱出して倒れたり、など。
柴田「高熱は呪いのせいではないと思います(笑)。
ただ、誰か夜中に頭叩かれたとかそういう話もありましたね、髪の毛引っ張られたとか。」
菊地「まあそういう細かいのは、みんなそういう心境で作ってるんで、微妙な部分もありますけれど。」
柴田「私の部屋に女っ気がないのに女の髪の毛がたくさん落ちてたとか。」
菊地「それは違うんじゃないかな。また別の疑惑だと思うけど……。」(一同爆笑)
---参考にした小説とか映画とかありますか?
菊地「いろいろと研究はしました。もちろん和風のホラー映画から、メジャーなものや王道といわれる
昔のホラー映画も見ました。怖さを出すための映像的な組み立てとしてフィルムっぽい表現に
したかったんで、古い戦争映画も参考にしています。」
 

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