『零〜zero〜』アンソロジー 最終回 『開発室』
担当:柴田誠 (ディレクター)

…今だから語ろう、本当にあったことを。

正直に言えば、零〜zero〜のプロジェクトには、あまりホラーマニアはいない。
意外かもしれないが、スタッフのほとんどは普段からホラー映画を見ないし、
怪談が好きというわけではない。
普段から怖い事に関心があるのは私くらいで、
どちらかと言うと怖いものは苦手な人が多いのだ。

そんなわけで、何か不可思議な現象が起こると

「やっぱり、御払いした方がいいんじゃ…」


という声が上がる。

「御払いしたら怖くないだろ? なにかあったら役得だと思え!」

その度に私は周囲を恫喝し、御払いの話は、
無事にお蔵入りになっていたのである。
その甲斐あって(?)、このプロジェクト中には、
さまざまな超常現象が順調に起こっていった。

その中で、私が体験したものを紹介しよう。


割れた蛍光灯
テクモ社内が騒然となった有名なエピソード

プロジェクトの開発中期、昼の2時か3時頃だったと思う。

全員が黙々と仕事にいそしんでいる中、
突然「パシーン!」と鋭い破裂音が響き渡った。

皆が顔を見合わせる。 明らかに、何かが壊れた音だった。
仕事を止め、何が起きたかと部屋の中を調べ始める。

「…これじゃないですか?」

やがてスタッフの一人が、天井を見上げながら私を呼んだ。
開発室のエレベータの前の蛍光灯が消えていたのだ。

これが割れたのなら、破片が飛び散って大変な事になるはずだと
床を見まわしたが、それらしいものは無い。

よく見てみると、蛍光灯は粉々に割れていたのだが、
フードの中に入っているタイプのものだったので、
破片は全てそのフードの中で止まっていたのだ。

しかし、電球がフードの中にあるということは、何かに当って割れたわけではない…
さすがの私も、この会社に入って以来、
こんなことがあったという話は聞いた事が無い。

蛍光灯を取替えに来た人も「なぜこんな事が起きたんでしょうね…」
と漏らしていた。



後日談: この事件は雑誌でも話したので、知っている人もいると思う。
社内の人からも「あれは本当にあったの?」と聞かれたこともあるが、
本当にあった話です。 (柴田)



『零〜zero〜』にありえないものが映りこんだ
『零〜zero〜』のムービー制作中、それは起こった

ムービー班で起こった出来事である。

このゲームには、作家たち三人が縄の廊下にやって来るムービーがあるのだが、
そのムービーを作成中に、スタッフから「何かおかしい」という話を聞いた。

行って見てみると、最後に作家が鏡の前で振り向く間際に、
画面の隅に白い棒のようなものが一瞬だけ写っている。

コマ送りして確認すると、
宙に浮かんだ足先が、鏡の上隅にチラッと写りこんでいるのだった。

まるでその人間が上から吊られているかのように…。

「柴田さん、これデータを調べてみると、ここに何も置いてないんですよ。
ただ、ムービーにした時に、どうしても入ってしまうんです」

「でも、なにかバグなんじゃないの?
一瞬ここにキャラクターがワープしているとか」

「それだったら、鏡の前にも足が無ければおかしいんです。
でも、この足は鏡の中にだけあるんですよ。それが、わからないんです」

「…」

「ちょっと怖いけど、せっかくだから、このまま出しますか?

「いや、バグだと思われるから、出来るだけ直してみてくれ」

「…そうですね」

どうしてもその足が消えないため、半ばあきらめていたのだが、
ムービー作成の過程で、いつのまにか消えてしまった。



後日談:なんらかのツールの不調だと思うのだが、いまだにその原因はつかめていない。
ただ、その時書いていたシナリオの部分と符号する所があったので、
ちょっと怖くなってしまった。(柴田)



『零〜zero〜』ディレクターに迫る霊の影
女性の髪の毛がカバンのなかに?!

このプロジェクトに関わってから、私の部屋にちょっとした異変が起こるようになった。
たまに、長い髪の毛が一本落ちている事があったのだ。

かなり長くつややかな髪の毛で、若い女性のものに見える。
もちろん、私のものでは無いのは明白だ。

その話をすると、プロデューサーの菊地からは

「またまた…。心当たりあるんじゃないの?」

とからかわれるのだが、残念な事に、本当に心当たりは無い。

最初はよく服についていたので、

「いつ服についたんだろう? 満員電車でも無いのに…」

くらいに思っていたが、部屋に帰る度に落ちているので、だんだん気味が悪くなってきた。

最初に見つけてからは、なるべく床をキレイに掃除するようにしていたのだが、
帰るとやっぱり床に長い髪の毛が落ちている。

まさか、私が帰った後に髪の長い女性がこの場所に立っているのでは…
という妄想が浮かんできた。

霊よ、出るなら出ろ。
どうせ霊が出るのなら、美人の方が良いぞ。

これまで見た霊は顔が腐っていたりして、ろくなものがいない。
しかし、この髪のツヤなら期待できる。

しばらくすると、髪の毛はもっと凄いところに入っているようになった。
カバンの中である。

帰ってあけると、長い髪の毛が一本、入っていたのだ。

見つけた時には本当に驚いた。
もはや、偶然では片付けられない。
しかし、その次の日には、もっと凄いところに置かれていた。

部屋に帰り、シナリオを書こうとパソコンに向かうと、
キーボードの上にこれ見よがしに置かれていたのだ。

「書くな」という意志を感じて怖くなったのだが、
それ以来、髪の毛は出なくなってしまった。



後日談:女性の霊だとしたら、一目見たかったのに残念である。(柴田)



その他にも、不可思議な現象は起きている。


企画のTは、夜の開発室で髪の毛を天井に引っ張られ、声を上げた。
同じく企画のHは、会社から帰り際、ガラスに映った女を見たが、
振り向くといなかった…などなど。

しかし、もう一つの隠された話を知りたい方は ここ を押してください…

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