ソフトバンク パブリッシング(株) ドリマガvol.22
12月12日号に於いて掲載されたものより転載いたしました |
プロジェクトマネージャー/長谷川仁 |
「恐怖をデザインする」 |
−ホラーゲームは世に多々あるものの「零」には独特の怖さがある。
例えるなら、おいてけぼりにされた怖さだろうか・・・
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長谷川 |
『零』はいろんなものが絡み合って恐怖を演出しているんです。
映像的なところでは、まずライティング。
前作とは数や点け方も違いますし、普通(リアル)ではありえないようなところからも当てたり。
私が思うに、明と暗のバランスが恐怖につながる唯一のところだと思うんです。
たとえば、そこ(と壁を挟んだ向こうの廊下を指して)に不自然な影が伸びてたら、なんか怖いじゃないですか。
まぁその不自然をいかに自然に見せるかが難しいのですが、ただ暗いだけじゃだめなんですよね。
次に空気感を出すために、すべての画面にフォグ(霧)をかけて微妙な奥行き感を出しています。
さらにディザーやコントラストの強弱をピクセル単位で施したりなど、イヤな感じがジワジワ伝わるようにしています。
ファインダーを覗いたときと普通のときと、効果も変えているんですよ。
最後にカメラのアングルですね。操作性を阻害するものは当然排除して、一番怖さが伝わるところをマスターアップの直前まで調整していきました。
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−綺麗に出せる絵をあえて演出のために荒れたものにする。
ゲーム途中にはフラッシュバックのようにモノクロのムービーが挿入されるのも・・・ |
長谷川 |
あれって、言い出しっぺは(ディレクターの)柴田さんと私なんですよ。
じつは前作を作るときに、黒と白だけで超ハイコントラストの映像を作り、さらに途中でブレるような効果をつけたものでゲームを実験的に作ったんですよ。
そうしたら、これは発売禁止になるくらい怖い、でも評価は10か0だなって(笑)。
たくさんの人にプレイしてもらいたいですし、プレイすべてがそうではいけない。
そこで緩急をつけるためにも、フルカラーで綺麗なところ、わざと汚したところ、それらはしかるべきところで使うということになりました。 |
−そしてそれらにストーリーと、音が加わって1つの恐怖が完成するという。 |
長谷川 |
どれが欠けても怖くないんですよね。
ストーリーをここでは語れませんが、逆に世界を作ってそこからストーリーを絡ませていったり。
音も実際の古い日本家屋に行って畳の上を歩く音や襖の音などを録ったり。そうして、開発途中でいろんな人にやってもらうんですけど、まだ怖くない、じゃあこれを工夫していって・・・
と過程の苦労もモチベーションに変えて、最後の最後に“歩いてるだけでも怖い”ゲームが完成しました。 |
−自信作として完成した本作だが、氏はまだまだ先があると言う。 |
長谷川 |
やっぱり想像力に訴えかける恐怖というのは面白いですよ。
ハードの限界でできなかったことも、今はできたりこれからさらに発達してできることも多くなるでしょうし、研究の余地は全然ありますよ。
ただ本作でも一応の確立はできたと思いますので、この我々が創った舞台、ストーリー、 超巨大な恐怖アトラクションで存分に怖がってください。 |