また、別の日の日記では…

某月/某日(日)
夜中4時頃、突然強い力で手を握られて目が覚めた。

かなりほっそりとした指の人だということはわかったが、暗くてよく見えない。

私は横向きに、両手を胸の辺りに置いて寝てたのだが、その手は、明らかに上の方から、つまり布団が開いている方から握ってきていた。
目を開けるとそこには誰かの腕が…となるはずだったのだが、残念ながら何もない。

握られている感触からすると、指は細く、手は小さい。ちょうど、小柄な女の人か、子供の手のようだ。しかし、異様なまでの力だった。
しかも、指は冷たい上、その力はだんだんと強くなってくる。
「いたい、いたい」
大きな声を上げて、布団の中を見ようとすると、手はスッと引いていくのがわかった。
引いて行く相手の指先の感覚がわかるほど確かな感覚だった。

布団の中を見ると、何もない。
ただ、その指の感触だけが次の日まで残った。

手を握られてから数日間、握られた方の肘が痛んだ。
痛みはだんだん強くなり、それは肩の方に移動してきた。
その肩の痛みは、一週間くらい続いた。

そんな感じで、しばらくは恐怖の日々を過ごした。
何より、現象が起きるのは夜中の3:26分ごろだと決まっているのも嫌な感じだった。
毎日起こるわけではないのだが、その時間が近づくと、妙に落ち着かなくなる。

それから『零〜紅い蝶〜』の開発が佳境に入り、あまり家に帰らなくなったこともあるが、その女には会わなくなった。家にいるときも出ない。

そこで、一つ思い当たることがあった。気のせいかもしれないが、なぜか部屋にファブリーズしたときには出ないのだった。
悪臭をとるファブリーズと霊……部屋の空気が綺麗になると霊が来にくくなるのかも…もしくは、霊が空気中のよどみや悪臭の中に潜んでいるのかも…もしかして、すごく重要な発見をしたのではないか?
もちろん、科学的な根拠はないのだが、そんな直感に基づき、
「霊で悩んでいる人は、部屋にファブリーズしてみることをお薦めします」と社内掲示板に書きこんだために、
私は"ファブリーズで除霊した男"として少し有名になってしまった。

これでかなり安心したのかもしれない。

「前作で霊体験をゲームにしたから、霊が私もゲームに出して〜って来たんじゃないですか?」
「出現の仕方が毎回違うなんて、サービス精神旺盛ですね。参考になりますよね」
「次はファブリーズで除霊するゲームですか?赤いファブリーズを使うの!…なんて」
「どうせ部屋に女が実際にいた、っていうオチでしょ…」(←断固としていない)
「いいかげん御払いしないと、また来ますよ、きっと!」(←断固としてしない)

などなど…あの"ありえない現象"はもう過去のことになりつつあり、まわりの反応はすでにネタ化しつつあった。

しかし、ゲームが発売されて部屋にいる日も多くなると、ファブリーズは欠かしていないにも関わらず(最近は盛り塩も導入した)、それがまた出始めたのだ…。

(そして、現在…)

 

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