世界の『零〜zero〜』    『零〜zero〜』アンソロジー 
担当:菊地啓介 (プロデューサー) /柴田誠 (ディレクター)

 

 

---今回は、世界の『零〜zero〜』と題しまして、海外での反響についてうかがおうと思います。

 

菊地 「先日、ある本のインタビューを受けたのですが、そのインタビュアーの方は「『零〜zero〜』に登場する霊は、とてもリアル!」だと感心してました。」
柴田

「その人は本当に"ありえないものが見える人"なので、たまに本物の霊が見えると言ってましたね。スタッフの中でも霊が見える人がいるんでしょうか、と聞かれました。」

菊地

「まあ、お前しか見た人間はいないけどな…」

柴田 「特に、廊下をスッと通りすぎる霊なんかは、かなり再現度が高いと。なんでも、本物はもう少しスピードが速いらしいですが、それ以外は本物そっくり!」
菊地 「うーむ、ほめられてる気がしないのは何故だろう…。」
柴田 「いや、これは最高のほめ言葉だって。」
菊地 「それはさておき、『零〜zero〜』では、「もし霊が現れたらこんな感じかな」というスタッフ間の共通の感覚みたいなもので作られていたので、海外で販売する際には不安もありました。直接的に絵で怖がらせるのではなく、想像に訴えかける怖さなので、文化が違うと捉え方も変わるのかな、と。」
柴田 「怪談や和風ホラー映画のような怖さというのは、私たちには身に染みついているのですが… 」
菊地 「というわけで、海外で販売してからはこのゲームがその国の人々にどう思われたか気になりましたね。」
 

 

---では早速、米国版『FATAL FRAME』、韓国版『零〜zero〜』、欧州版『Project ZERO』について見ていきましょう!

 


◆米国の場合
菊地 「発売してから、米国の方々からも「すごく怖い」という評価を戴いてましたが、ちょっと半信半疑だったんですよ。本当にこの感覚が伝わっているのかな、と。」
柴田 「でも、蓋を開けてみると、結構伝わってるんですよね。「THE NEW YORK TIMES(JUNE,27 2002)」に『零〜zero〜』の記事が掲載されたんですけど、その抜粋を紹介させてもらいます。」

FATAL FRAMEとは、暴力ではなく、雰囲気的な恐怖をあつかった、幽霊のゲームである。
FATAL FRAMEを怖くさせているものは些細な事柄だ。たとえば、フロアボードの軋む音、壁に幽霊の影を投影するフラッシュライト、天井からかかっているミステリアスなロープ、儀式を乱すことについての描写がある引き裂かれた日記のページ、そして奇妙な消失。なるほど確かに見えない幽霊が屋敷中私を追いかけては「目が!私の目が!」と叫んでいたりもするが、しかし、恐怖の本質はこのような点にあるのだ。
FATAL FRAMEは、戦闘や謎解きの面でというよりも、心が安まることのない幽霊的な雰囲気が面白い。
「Aliens Versus Predator2」よりもさらに強烈な雰囲気の中で、FATAL FRAMEの不気味な音とムードのあるビジュアルが、恐怖によりあなたを痺れさせるだろう。案内をするために出てくる悲しいゴーストたちでさえ、突然現れたり、助けを与えるためにまぶしく輝いたりして、あなたを怖がらせる。
「FATAL FRAME」は、戦闘の時間よりも出来事が起こるのを待っている時間の方が遙かにすばらしい、と私は思う。

柴田 「普段は和風ホラーの怖さと軽く言ったりしているのですが、そういう静的な怖さを言葉を尽くして表現されてます。」
菊地

「ちゃんと怖さが伝わっていて、ほっとしましたよ。」

 

 

---しかも、怖さをしっかり楽しんでもらってますから、うれしいですね。

 


◆韓国の場合

 

 

---韓国の『Monthly PlayStation OFFICIAL MAGAZINE』のテリョンさんのインタビューを受けたときに『零〜zero〜』の感想をうかがいました。

 

柴田 「この号はテクモ特集で、『ボンジャック』から今度発売する『アルゴスの戦士(PS2版)』にいたる歴代のテクモのゲームの紹介、最後には『零〜zero〜』完全攻略ガイドまで載っていて盛りだくさんです!」
菊地

「恥ずかしながら、我々のインタビューも載っています…。しかし、話をうかがっていると、怖いと思うポイントは、ほとんど私たちと変わらなかったですね。」

柴田 「日本のユーザーと同じような場所で怖がってましたからね。」
菊地

「テリョンさんは『零〜zero〜』のプレイ中にあまりにも悲鳴をあげすぎるので、編集部内でのプレイを禁じられたとおっしゃってました。」

柴田 「霊に対して持っているイメージも似ていましたね。まあ、同じアジア圏だから、感覚も同じですよ。」
菊地

「ちょっと乱暴だなあ。」

柴田 「他にも収穫だったのは、韓国にも「写真に写ると魂を吸い取られる」という迷信があったことです。」
菊地

「アメリカで話したときは全然わかってもらえなかったんですけど。」

柴田 「あと、テリョンさん個人としては、菊地と同じく「首が折れた女」の霊が"萌えキャラ"だそうです。」
菊地

「だから、それは違うって!」

 
 
また趣(おもむき)の違った『零〜zero』。こっちの方が怖そう?

 
コミカルなタッチの零漫画も。

◆欧州の場合
 

 

---『零〜zero〜』の欧州版『Project ZERO』は、フランスのWanadoo社から発売されました。

 

柴田 「欧州版を作るときに、翻訳やプロモーションなど、いろんな面でお世話になりました。」
菊地

「何でもWanadooさんは、零〜zero〜が日本で発表されたときから目を付けていたというから、こちらの方が驚きましたね。」

 

 

---『零〜zero〜』はフランスのゲーム誌『Joypad』で大きく取り上げられました。

 

 
 
Joypadの表紙。
やたらとデザインがかっこいい。一瞬『零〜zero〜』だとわからないくらい…
 

 

---この雑誌では"Megastar"アウォードを受賞したんですよ。つまり、9月のお勧めタイトルというということなんです。それだけヨーロッパでは高く評価されているということですね。以下はJoypad誌の零〜zero〜の記事(抜粋)です。

 


ゲームスタートから最後の一分までゆきわたった、ファンタスティックな雰囲気について話そう。
映画通には分かると思うが、日本のホラームービー「リング」と似通った世界観がある。素晴らしい演出方法は、ちょうど良い頃合ぴったりに、つまりプレーヤーが待ち受けているその瞬間に、恐怖ネタが訪れるよう、しかも大量のネタをかなり的確に振り分けているのだ!
部屋には誰もいない、プレーヤーは奥の間を、懐中電灯を使って、一つ一つ見て回らねばならない。
さあ、そこで扉を開くのだ、そこであなたの後ろをゆっくりと歩く蒼白の男が、ちらりと見える!その疑念と向き合うために後ろを振り返る・・・誰もいない!この手のフェイントはかなりの頻度で現れ、本物の戦闘はあなたの不意を突き、突如として始められる。しまいには、絶え間なく包囲され、見張られているのではないかという気にさえなってくる!
心霊現象が続くにつれ、本当に耐えられなくなってくる・・・鋭いサウンドが幽霊の苦しげなうめき声に加わるのだ・・・おお怖い!なんと言ってもそれに慣れることはないし、ゲーム中ずっとこの恐怖に耐えねばならないのが悲惨だ!(翻訳:森千鶴子)

柴田 「プレイ中に後ろが気になる感覚というのが伝わってきます。」
菊地

「じわじわとやってくる恐怖、というのも受け入れられるんですね。」

 

 

---さきほどの記事でも触れられていますが、映画「リング」はフランスでも公開され、大好評だったそうです。

 

菊地 「零が高く評価されたのも、そういった下地があったためかもしれませんね。」
柴田 「ほら、ヨーロッパの映画って叙情的でゆったりしてるじゃない?だからこういうじわじわとやってくる恐怖も合ってたんじゃないかな。」
菊地 「それ、なんかウソ臭いな。」
 

 

---なんと、Joypad誌から『零〜zero〜』についてコメントを戴いております。

 


『とても怖いゲーム。プレイヤーがこれほど恐怖を感じたことはかつてありません。特別なゲームであり、リングのような純粋なアートです』

柴田 「ゲームをアートとして捉えるところが、フランスらしい!」
菊地 「それ、偏見だよ。きっと…」
 

 

---Joypadのエディターの方々のコメントも送ってくださいました。

 


「フランスでは、ゼロはちょっとした奇跡のように思われています。
なぜなら、いわゆる『違い』をもたらすのは巨大なプロダクション・スタジオではなく才能であるということを、大手のゲームメーカーに対して証明したからです。
映画『リング』がフランスで成功したように、『Project ZERO』もまた、未体験の新しい恐怖を日本からもたらした、絶対買いのタイトル!」
(グレゴワール・エロー、26歳、男、職業:ゲームライター、Joypad,PlayStation2 マガジン・フランス、日本のファミ通Xboxのコラムニスト)

「『Project ZERO』のストーリー展開そのものは古典的だと言えなくもないが、『Project ZERO』は、プレイヤーに今までに無かった新しい恐怖の感覚をもたらした。」
(ジュリアン・ユベール、25歳、男、職業:ゲームライター、Joypad,PlayStation2 マガジン・フランス)

「私は、自分の意見を提供することができません。何故なら、このゲームを 1時間もプレイ出来なかったからです。手と肩がひどく震えてしまったので コントローラをコントロールすることも出来ませんでした。本当に怖いゲームです!」
(カリーヌ・ニットキーヴィッツ、28歳、女性、職業:ゲームライター、Joypad,PlayStation2 マガジン・フランス)

「ぞっとするほど怖いと言う以外に言葉がない!一人じゃプレイできません!ドアや箱を開けるときでさえ、ビビッてしまう。ビデオゲームでこんなことを味わったことは初めてです!ときには叫んでしまいます。いつゲームをクリアできるかわかりません。ちょっとずつしか進めないのだから」
(カレル・ヴァンサン、22歳、女性、職業:パリのゲームソフト販売店「JoueClub」勤務)

 

 

---最後に、フランスのゲームショップのディスプレイをご覧ください。

 

 
 
凝りまくった店頭ディスプレイ
 
 
蜘蛛の巣が張ってるところが芸が細かい
菊地 「これは豪華。雰囲気出てますね。けっこう怖いです。」
柴田

「まるで別のゲームを見ているかのようだ…」

 

 

---では、今回はこの辺で。ここまで読んで下さったユーザーの皆様、お疲れさまでした!

 

 

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