『零〜zero〜』アンソロジー 第一回 『霊』
担当:稲荷大輔 (ムービー班) 柴田誠 (ディレクター)

深紅、最初のバトルへとつながるシーンの秘密
 
兄を追って、氷室邸を探索する深紅。
手掛かりを追ううちに、この屋敷で
何かがあったことを感じる。
そして、霊となった編集者が深紅に襲いかかる。

ゲーム本編に収録されているこのシーンのムービーを
ご覧いただけます。 DOWNLOAD(3.0MB)
 
その場の空気が変わる瞬間
---序盤のこのシーンが、ゲーム中では重要なシーンとうかがいましたが?
柴田「このゲームの特徴である「ひたひた迫る恐怖」が出せるかどうかという、キーに
なるシーンでした。」
---深紅に対して直接、霊が襲いかかってくる最初のシーンですよね?
柴田「考えてみると、血が飛び散ったり、グロテスクなモンスターが出るわけでもなく、
出てくるのは"ただの男"。それだけの要素で怖く見せようという無茶な事をやろうとしていた
わけで、 かなり試行錯誤がありました。
とにかく、霊の気配とか、その場の空気が変わる瞬間というものを表現したかったのです。」

カットされた未公開シーンがあった
稲荷 「当初このシーンは完成版の実に2倍ものボリュームがありました。」
---今のシーンの2倍ですか?
稲荷「はい、なにしろ深紅が霊に襲われる最初の場面だということで、
力が入ることも並々ではありませんでしたから。」
柴田「じわじわ、という感じを出すために、かなり長いものになっていましたね。」
---カットされたシーンはどのようなものだったのですか?
稲荷「深紅が何かの気配を感じて振り返るのですが、誰もいない…というのを
3回くらい繰り返し、 そのうえで、視界の端を霊がちらりとかすめる、
というのもさらに3回くらい繰り返しました。」
---そして編集者の霊が深紅に迫るわけですよね?
稲荷「ゆっくりと迫る霊の動きをこれでもかとばかりの長回しで捉え、 あまつさえ
恐怖に駆られた深紅がすっ転んでカメラを落としてしまう、 というようなシーンでした。」
---今とは少し違いますね。
柴田「微妙な間(ま)や、カメラワークを効果的に使って、霊は深紅を見ているのに、
深紅の方からは何も見えない…という感じを出そうとしました。
見渡しても誰もいないのに、存在感だけはひしひしと感じる。
いないはずのものがいる。いるはずのものがいない。
そんな禅問答のようなシチュエーションがうまく出せました。

霊というありえない存在を肌で感じる
---結局、それらのシーンは収録されなかった?
稲荷「このシーンをいざゲームに組み込んでみるとそのあまりの長さにゲーム全体の流れを
損なってしまうことが判明し、結局大幅に削らざるを得なくなりました。」
---それで実際のムービーのようなテンポになったのですね?
柴田「映像単体で見ると、カットする前のバージョンの方が思わず惹きこまれてしまう
ような力をもっていたと思いますが、ゲームのテンポとのバランスを考えると、
今のがベストだと思います。 」
稲荷「カットした結果として非常にテンポの良いスリムなシーンになりましたね。」
柴田「おかげで、霊というありえない存在を肌で感じる、ということが表現できた
のではないでしょうか。」
 

『零〜zero〜』の霊は元は人間

言うまでもなく、霊は元は人間である。
モンスターなどとは違い、感情を持っている。
そして、それぞれの生い立ちや、ここに来た目的といったバックボーンがある。
死んだ理由や、思い残した事も…
このゲームでは、ささやく言葉や、しぐさ、攻撃方法などに個性を反映させた。

刻命館シリーズにも言えることだが、登場するのが人間である以上、
いわゆるザコと言うものをなるべく作りたくなかった。
それぞれの個性をもったキャラクターであることを表現したかった。
人間を相手にしているから面白い、そして人間だからこそ怖い。
それを感じ取ってもらえれば幸いである。(柴田)

(霊の画像をクリックすると、大きな画面でご覧になれます)


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